第119回 吉祥寺の街にも影響アリ?都市計画道路「外環ノ2」に迫る! (3)





2014年3月28日

既に先月とのことで、この日も色々な出来事がありました。ニュースとして大きかったのは某野党のトップが民間会社社長より8億円を借り入れていた話題。選挙資金に流用したかどうかが争点となりつつ、現在は党首辞任、資金は「熊手購入」等に投入、という所で落としドコロが探られてます。が予断を許さず、未だにマスコミを賑わせていますね。


そして、その裏側、この日の官報「号外」上で、ひっそり事業認可告示(国交省395号/396号)された事案があります。

■出典:官報(号外)(2014年3月28日)



その内容とは、
















<国交省告示395号>
 ・都市計画事業の種類及び名称
   東京都都市計画道路事業 都市高速道路外郭環状線
 ・事業施工期間
   平成26年3月28日~平成33年3月31日
 


まさに外環道の事業認定告示となります。

事業地として収容/使用部分に分かれており、後者の「使用部分」には

 三鷹市井の頭1丁目・2丁目
 武蔵野市吉祥寺南町3丁目・4丁目・5丁目
 武蔵野市吉祥寺東町4丁目

 

など、吉祥寺駅近傍のエリアが含まれています。

さらに「使用部分」については

<国交省告示396号>
 ・都市計画事業の種類及び名称
   大深度地下の公共的使用に関する特別措置法に基づく使用認可
 ・事業の種類
   中央自動車道富士吉田線に関する事業とそれに付随する工事
   関越自動車道新潟線に関する事業とそれに付随する工事


が指定され、その事業区域として「地下41メートル~78メートル」とされています。つまり収容部分は外環道インターチェンジとして土地収用が行われ、使用部分は大深度地下に外環道が通る区域ということですね。








 




制度的には、立体道路制度の適用区間となっています。

道路は従来「平面的」に定められてきましたが、これを道路区域上下に限定して「立体的」に定められる様にすることで、地下・地上建物と一体整備できるようににする制度です。大深度地下の外環道には区分地上権が設定され、地上の土地所有者は引続き自由に土地を使うことができます

この点は今回の特集におけるポイントです。





 









■出典:立体道路制度の概要(国土交通省)

 

しかし地下78メートルとは、まさに大深度ですね。

ちなみに高層ビルの1階フロア高が3~5mですので、仮に4メートル弱で換算すると「地下20階」ということになります。

ちなみに大深度地下とは、2001年施行の「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」(通称:大深度法)による地下利用の新概念(Wikipedia)であり、一般的に地下40mより深い「大深度」地下空間を有効・公共利用しようという点がその骨子です。


現状は、

<認可済>
  神戸市送水管敷設事業(2007年6月19日認可)
  東京外かく環状道路(関越道 - 東名高速間)(2014年3月28日認可)

<認可に向けた事前の事業間調整中>
  中央新幹線(東京都 - 名古屋市間)


に認可、または調整中であり、実績も増えています。

また、今後認可想定事業としては、以前特集した「中央本線」(京葉線延伸:東京駅 - 三鷹駅)もあります(事業化されるかどうか不明ですが)。

ちなみに「なぜ大深度地下を使うのか」そのメリットについては国交省さんの資料がありますので、そちらをご覧ください。






 














■出典:国土交通省都市・地域整備局 都市・地域政策課パンフレット



さて

今回の大深度地下のトンネル工事について詳しく見てみます。その工法は、現在最も主流である「シールド工法」。特にその中でもメジャーな「泥土加圧シールド工法」が想定されています。




 
















一般的に、トンネル工事は土圧と地下水圧との戦いです。

スクリューコンベア内に掘削した土砂と水を混ぜた泥を注入し、シールド全体の推進力でそれを加圧することで、土圧・水圧と抗しようという技術です。大深度ともなれば、土圧・水圧も高い難易度の高い工事となることが想定されますが、それに対抗しうる、まさに日本が誇るトンネル技術となります。

■出典:シールド工法技術協会
  http://www.shield-method.gr.jp/#


 



それに加えて

外環道工事には様々な最新技術の投入が計画されています。先の「シールド工法」の技術的な課題は主に「大断面化」「長距離化(高速化)」「周辺領域」の3点に集約されますが、外環道工事には、それらを克服する新技術が投入され、まさに最新技術の見本市となりそうですね。


 

たとえば大断面化

これはシールドマシンの大断面化のことです。これまでの最大断面は首都高速新宿線山手トンネルで使われた「14m級」。2車線に対応していますが、外環道の東八道路IC以北で片道3車線での計画であり、これを上回る「16m級」の投入が計画されています。


たかだか2m差。しかし、先の通り高い土圧・水圧に抗するために、シールドマシンの全体構造を含む、諸々の技術革新が必要とされます。


そして長距離化高速化

1台のシールドマシンで長い距離のトンネルを掘ることができれば、工期もコスト的にもメリットがあり、立抗の本数も減らせます。ただし高い土圧・水圧の大深度ではマシンに相当の負荷がかかります。これを克服するため、実際に土を掘り進む「カッター」部分の強度アップや内部換装を可能にする等、地道な技術革新が進められています。


また地上からシールドマシンを発信させ、地上に帰着させる、という最新技術・工法も誕生しています。これまではルート上の一定区間ごとに立抗を掘り、そこでマシン組み立てるケースが多く、この技術・工法の投入で、その分の諸々を減じることができます。





 






■出典:UPUP(ユーラップ)工法(大林組)HP
 http://www.obayashi.co.jp/service_and_technology/pickup_003



そして周辺技術。
 

例えば大深度地下でインターチェンジをどう造るか、という課題があります。

具体的には、3車線で16m級といえど、インターチェンジの合流部分は4車線化する必要があります。いわば2つのトンネルを合流させて、しばらく併走させる必要がある訳ですが、大深度の高い土圧・水圧の中では、この施工についても容易な話ではありません。

これらの課題に対しても様々な技術・工法の研究開発がなされています。






 








■出典: NEW TULIP工法研究会HP
 http://new-tulip.com/method/futokei/


 


「日本の土木技術は世界一」と言われますが、この外環道工事、エンジニアリングの観点ではプロトタイプの実践実証の場(※)、まさにグローバルなインフラ技術輸出に向けた日本の土木技術・工法の見本市となりそうですね。

 ※技術的なフィジビリティについては国交省「大深度トンネル技術検討委員会
  (委員長:今田徹JICE顧問)」で確認されている点を申し添えておきます。



 


時はさかのぼり1994年のこと。


 

前回都知事選候補の細川護煕さんが首相を辞任した年でもあります。

この年の3月30日、外環道「大泉JCT~三郷JCT」間が開通します。そして凍結されている大泉JCT~東名高速JCT間をどうするか、の議論が再燃するようになります。ただし従来の高架式では、多くの土地収用が必要であり、そもそも計画として現実的ではなく着工の見通しも立ちません。 


そこで議論される様になったのが「地下化」でした。



1997年9月、東京都と建設省が第1回東京外かく環状道路懇談会を開催し、そこで「西部環状部分において地下構造を有力案とし具体化を図る」ことが確認され、議論が一気に加速することになります。


折しも1995年以降、シールド工事の件数は減少傾向にあり、技術開発や技能伝承の観点から財界的にも受け入れやすい話だったのでしょうか。





 






 



■出典:シールド工事の件数(国交省大臣官房技術調査課/2012年)



そして1999年一大転機が訪れます。


石原慎太郎東京都知事が就任。同年12月都議会定例会で「地下化案を基本とする」旨を表明。2001年に扇国土交通大臣 石原都知事 三鷹市武蔵野市の現地視察し、地下化に向けた合意形成が進められ、「現計画の自動車専用道路と幹線道路の広域機能を集約して、全線地下構造の自動車専用道路とします。」とされ、2003年に国土交通省・東京都が「大深度地下化の方針」を公表するに至ります。

その背景として国交省さんのホームページでは、








 ・外環を整備することで様々な効果が期待できます
 ・同時に生活環境や自然環境に与える影響を極力抑えることが必要
 ・昭和41年の都市計画では、外環は高架構造であり、多数の移転や

  地域分断を伴う
  また環境等の観点からみた懸念も問題とされてきた。
 ・高架構造を地下構造とし、沿線環境の影響を最小限に抑える


としていますね。

■出典:国土交通省 東京外かく環状国道事務所
    http://www.ktr.mlit.go.jp/gaikan/gaiyo/kouzo.html


外環道の自動車専用部分が地下化され、日本の将来のインフラ技術輸出を見越した難易度の高い技術を用いた工事になりそうです。


国土交通省さん的にはこれで一件落着な訳ですが、困ったのが、地下化されずに地上部に都市計画として取り残されてしまった都道「外環ノ2」を仕切る「東京都都市整備局都市基盤部」の皆さん

ここからこの「外環ノ2」を巡って問題が吹き出し始めます。