第91回 吉祥寺の街が変わる!?進む再開発事業とは (3)







吉祥寺再開発


さて、前回は吉祥寺再開発の要である「JR吉祥寺駅改良工事」および「京王吉祥寺駅ビル建替工事」の概要に迫ってみました。まさに吉祥寺の核で行われている2大事業、ぜひまちづくりの核として、街の回遊導線の要として頑張ってほしいものです。そして前回も触れましたが、吉祥寺を吉祥寺たらしめている商業的要因は駅から200m範囲に大型商業集積が広がりをもって配置されている点。もちろんそのエリアも再開発とは無縁ではありません。今回は、そのエリアで行われている再開発を少し細かく見ていきましょう。



■写真出典:FASHION HEADLINE 「④吉祥寺本町二丁目計画新築工事」           

        http://www.fashion-headline.com/article/2013/05/20/1785.html




③吉祥寺南町二丁目プロジェクト
  (地上9階地下2階 延面積:8838㎡)






これは吉祥寺駅の東側、末広通りの入り口にあったビルの建替事業です。最近、注目が集まりつつある吉祥寺イーストエリアの目抜き導線である「末広通り」。その入口ですから、まちづくりにとっても大切な位置づけとなります。

再開発ビルのテナントは「ヤマダ電機」さんですね。すでに一部のメディアに取り上げられている様です。もともと噂はありましたが6月28日に大店立地法に基づく届出がなされました(実は今回の特集のきっかけはこの届出でした)。来春2014年3月1日の開店に向けて整備が進められます。

ただし、ビルの工事期間は6月30日まで線が引かれていますから、ビル外構工事等を残したまま家電需要期である3~4月に合わせた暫定開業かもしれません。気になるのは届出上の店舗面積が4013㎡である点。ビル自体の延面積は8838㎡ですからビル上層階は他の施設や住居が入るのかもしれませんね。

ちなみに

ヤマダ電機は国内最大の家電量販店。吉祥寺ダイヤ街にも小ぶりながらも「LABI吉祥寺パソコン館」を構えています。ただし同社HPには「対象土地の近隣に当社の既存店舗があっても土地(店舗面積)が大きくとれるのであれば積極的に出店いたします。」とあり、基本的なスタンスは強気の店舗数拡大を図っている、といった感じです。意外なことに多摩地区での大型店出店は今までなかった様ですね。

そして最近の同社の話題は「エス・バイ・エル株式会社」の買収新築リフォームビジネスや太陽光パネル販売・設置に力を入れている点。吉祥寺は古くからの住宅街ゆえに高齢化が進んでおり、これから世代交代に伴うリフォーム需要は高まっていきます。そのあたりを軸にヨドバシ吉祥寺と棲み分けながら存在感を発揮していくのでしょうか。いずれにせよ要注目ですね。


 


④吉祥寺本町二丁目計画新築工事
 (地上7階地下2階 延面積:6582㎡)


 


 





















こちらは南町二丁目プロジェクトと駅をはさんで正反対。通称「東急裏」の代表的な目抜き通り「中道通り」入口にあるビルの再開発です。来街者でにぎわう中道通りの入口ですから、こちらも重要な位置づけである点は変わりません。

こちらに入店するのは今やグローバルカジュアルブランドの一角に名を連ねる「ユニクロ」。ユニクロとしては、アトレ吉祥寺店、ヨドバシ吉祥寺店に続くエリア3店舗目の出店となります。地上7階まですべてのフロアを借り切るとのことですから、ユニクロとしても大型店となります。

現在、ユニクロは

○大都市圏での出店加速へ
○メンズの2倍強の規模があるウィメンズ市場へ
○大型店のビジネスモデル確立へ


という事業戦略をとっており、まさにその線に沿った出店といえるでしょう。


ヒートテックなどの高機能衣料、グローバルな素材調達による収益力に加え、独自の大型店運営ノウハウを蓄積している同社がどの様な店舗に仕上げてくるのか注目したいところです。ぜひ高機能衣料や、パターンやカラーバリエーションが豊富なインナーやベーシックな日用衣料など、折角の資本力を生かして他の周辺路面店と共存が図れるような商品群を充実させてほしいですね。
 

資料出典:ユニクロ事業戦略
http://www.fastretailing.com/jp/group/strategy/tactics.html








 



















ということで 今回は駅近の再開発を見てきました。これらは商業開発としては注目したいところですが、忘れたくないのは「まちづくりの視点」。実は、家電量販店もユニクロも、吉祥寺に住んでいる人や街をよく知るリピーター来街者からすれば「もういらないよ」という声が意外に多いのも事実です。事業者からすれば吉祥寺の来街者数やブランドは魅力的ですし、行政からすれば「100万人商圏の維持」に向けて吸引力ある専門店誘致は重要なのでしょう。




















写真出典:武蔵野市報(昭和40年7月号) 
       初期の吉祥寺駅北口再開発の計画のイメージ模型

しかし それだけを考えて、吉祥寺全体を意識した回遊導線設計や演出を怠れば、吉祥寺は街として尻つぼみになります。そうなれば出店事業者にとって魅力が薄れ、退店が相次ぐようになり、中長期的には吉祥寺に負の影響しか残せないでしょう。そんな風に坂道を転がるように衰退に至った往年の商業都市は全国に数多くあります。

いざという時には自社の利益優先せざるをえない点はどの事業者も一緒ですが、特にその線引きが明確で出退店のリスクポートフォリオがしっかり組まれているナショナル/グローバルチェーンの吸引力や、個々の行政マンにパワーがあったとしても組織的に責任が取りづらい行政の施策頼みのまちづくりには限界があり、まちにとってリスクでもあります。

これからの吉祥寺は、来街者目線に立った一人ひとりの声がいよいよ大切になってくる段階に入ります。具体的には、ナショナル/グローバルチェーンと対等に立ち合い、依存することなく常に交渉力を維持し続けるための行動やそのサポートが必要になります。終わりは新たな始まり、出店=再開発完了でない訳で。

再開発で吉祥寺のこれからのまちづくりを担う役者が再びそろったと考えて、2014年は再スタート!との意識を持ち、頑張っていきたいですね。



 


さて、次回は ⑤謎のプロジェクト に迫りながら、Blog de 吉祥寺恒例の「吉祥寺のまちづくりの歴史」編へと踏み込んでいきたいと思います。


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