第94回 吉祥寺の街が変わる!?進む再開発事業とは (6)






























2013年9月13日

吉祥寺駅南口の核店舗といえば丸井。最近は米発のパンケーキ屋「オリジナルパンケーキハウス」が店舗1階に日本1号店をオープン。週末になると行列ができる人気スイーツ店になっています。その丸井吉祥寺店の6Fに入るのが無印良品。もともと丸井吉祥寺店別館に入っていました。開店日が9月13日です。

さて、今回は吉祥寺駅南口再開発というテーマの中で、この丸井吉祥寺店の歴史を軸に南口の今後を占ってみることにしましょう。



写真:丸井百貨店のフロア案内。左上の6Fが現在空白(以前は啓文堂書店でした)






丸井吉祥寺店の歴史

というと、まず開店したのは今から半世紀前の1960年10月のこと。吉祥寺北口の再開発計画の決定が1964年ですからその4年前、まだJR中央線も高架化されておらず、いわば「前世代」の吉祥寺への先見性ある出店でした。


























<吉祥寺の大型店開発の歴史>

 1960年 丸井吉祥寺店 
 1969年 吉祥寺ロンロン(現在のアトレ吉祥寺店)
 1971年 伊勢丹吉祥寺店(現在のコピス吉祥寺)
 1974年 東急百貨店吉祥寺店
 1978年 丸井吉祥寺店リニューアル(現在位置への移転)


出店当初の店舗位置は丸井吉祥寺店別館、かつてのキャンパス館、最近の無印良品吉祥寺店の位置でした。そして8月に無印良品吉祥寺店が移転に伴い閉館となったことは記憶に新しいところです。

ちなみに無印良品が西友のプライベートブランドとして店頭に現れたのは1980年。当時はスーパー大競争時代。その一角の西友による商品上質化を図る差別化策の一環で誕生しました。その後、売り上げを順調に伸ばしセゾングループの一角として多角化が図られます。ファッション主体、かつ日本で初めて「クレジットカード」という言葉を用いた丸井グループと、同じくパルコや「永久不滅ポイント」のクレディセゾンを有するセゾングループはある意味でライバル同士。その別館に無印商品が出店したこと自体、当初は驚きでした。


しかし実は無印良品、1998年時点で資本的にセゾングループから半ば離脱していたんですね。2001年にセゾングループが崩壊、セゾングループのクレジットカード会社であったクレディセゾンが丸井グループと業務提携すると、無印良品と丸井の関係も近づき、その流れでの出店でした。




 



















ューヨーク近代美術館(MoMA)でも陳列されていた様な無印良品の商品。その基調はミニマルの一言につきます(ブロードウェイやJFKでもお店を見かけましたね。ノンジェンダーな感じがニューヨーカーに受けるらしい)。デザイナーに深澤直人や気鋭の吉岡徳仁、広告のアートディレクションは日本デザインセンターの原研哉御大を配するなど、シンプルで加飾のないデザインを主体とした商品群は、吉祥寺の街の雰囲気とよくあっています

ベビー用品から子供・カジュアル、ビジネスウェアから自転車、家具とフルラインで店内散歩も楽しめる規模でしたから、井の頭恩賜公園からの帰路にフラッと立ち寄るにも重宝なお店でした。



























さて話を戻しますと、この建物、旧丸井吉祥寺店→別館(キャンパス館)→無印良品吉祥寺店と時代に合わせてテナントが入れ変わっています。所有者は青井不動産株式会社、丸井グループの第五位の大株主さんです(創業者の青井家系列なのでしょうか)。そして無印良品の賃貸借契約が終了したことを受け、次に入居するテナントはといいますと、

ドン・キホーテ

さんに確定した様ですね。その昔から出店の噂が絶えず、2001年に第一家電と業務・資本提携をした時は、ダイヤ街に出店するとの噂もありました。近鉄百貨店吉祥寺店閉店の際も同様です。常に噂には上がってきた同社がいよいよ吉祥寺に出店となりました。










 
























丸井は現在、関西進出に軸足を据え、都内小規模店を中心に積極的なスクラップ&ビルドを進めています。グループテナント入居や専門店ビルのモディ化は競合林立する吉祥寺では厳しかったのでしょう。また今の時代、ターミナル駅前売場面積2186㎡、7階建てを一棟借りきれる力のある小売業者はなかなかいないはずです。

思いつくとすれば、まだ勢いが残る家電量販とファストファッション。しかし2014年にヤマダ電器吉祥寺店(仮)ユニクロの巨艦店が出店が予定される中、さすがに両業態は飽和状態で望み薄。となると候補は限られていたんですね。




 













□資料出店:日本経済新聞  2012年小売業売上高ランキング(一部・ドン・キホーテ社が加筆)



さて

ドン・キホーテといえば終夜営業と圧縮陳列で名を馳せた異色の東証一部上場企業です。業種はディスカウントストア。2013年6月時点で全国200店舗を達成し、今期決算短信からすると24期連続の増収増益既存店売上もリーマン以降の不景気の中でも横ばいという業績。今、勢いがある小売業の一つです。外国人投資家の持ち株比率も6割を超えてますね。

そんなドン・キホーテが進めているのが「首都圏一等地戦略」。郊外のロードサイド店が多く、周辺渋滞や後背地住民との軋轢を起こしているイメージが濃い同社ですが、今後は首都圏のターミナル駅近くへの出店も進めていくという方向性だとか。ちなみに同社の年間売上高は約5700億円。小売業で13位、10位集団のエディオン、ケーズHD、ヨドバシカメラも射程圏内。後発の小売業ではありますが、実は20位の丸井より売上規模は大きいんです。






 














このドン・キホーテ。創業の地は西荻窪。杉並区上荻四丁目に1978年に創業した「泥棒市場」というお店が原点です。その後、府中にドン・キホーテの1号店を出店した後、徐々に店舗網を広げていきました。実は井の頭通り沿いの出店は初めてではありません。かつて杉並区の井の頭通り沿いに出店していましたが、2003年に閉店しています。西荻、杉並と、まさに今回の吉祥寺店は凱旋出店といっても過言ではないでしょう。

同社の2013年6月業績をみると、売上構成は「時計ファッション用品 24.7%」「日曜雑貨品 24.5%」であり買回品と日用品両方を揃えています。また約10%のシェアを占める家電はスマートフォンアクセサリやPASA系が主力。儲けシロの大きい商品カテゴリーであるが故に、吉祥寺の個店でも少なからず影響を受けるお店がありそうです。























さらに、同社の特徴の一つは終夜営業深夜2時以降に売上の2割強を上げる、という凄まじい時間帯別売上構成です。今は閑散としている夜の吉祥寺駅南口で終夜営業ということになるでしょうか。仮にそうなるとしたら駅南口周辺交通や風紀の面からも、吉祥寺駅西口交番さんの出番が増えそうな感じです。

特にロードサイド出店が多い同社。週末になると深夜でも駐車場が満車で、あふれた車による幹線から一本入った住宅街の生活道路での無断駐車が後を絶たなかった、というケースも。路線バスターミナルとして日常的に混み合う井の頭通りですから、その点への事業者としての配慮はぬかりなくお願いしたいですね。



そんな同社ですがグループ内にいろいろな業態を擁しています。

その中で注目したいのは「PICASSO」。赤坂など都心店舗にみられる業態なんですが『高級』と『驚安』の調和を掲げて、海外ブランド品や国内の地産品(たとえば今治のフェイスタオルなど)など、仕様、産地、素材にこだわった商品を擁している点が特徴。同社の特徴の「圧縮陳列」は健在ですが、ボリュームを少し抑えて落ち着いた感じの店内となっています。







 





















□写真:PICASSO店内 (日経BP社)
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20120312/1040026/?SS=expand-life&FD=-1762630498


どうせできるなら、このあたりの業態はどうでしょうか。吉祥寺の来街者のタイプや街の空気にうまくフィットしながら、既存店舗と少しばかり差別化が図る、という絶妙なポジションになるかもしれません。アッパークラスの商品群といえば、気になるのが東急百貨店との兼ね合いですが、外商部隊の存在もありますし、そもそも根本的に客層も異なる感じもします。

ともあれ


2013年11月に開業予定のドン・キホーテ吉祥寺店(仮)。どの様な店舗になるのでしょうか。気になるところです。





人気の投稿