第92回 吉祥寺の街が変わる!?進む再開発事業とは (4)






都市計画マスタープラン

まちづくりを計画的に進めていく上では行政を皮切りにいろいろな「構想」やら「プラン」がつくられます。先に掲げた「武蔵野市基本構想(2004年12月策定)」「吉祥寺グランドデザイン(2010年6月)」もその一つ。これらは総務省所管の地方自治法に沿って作られた「まちづくりの基本方針」です。武蔵野市議会の決を得る必要がありますね。


そして、その基本構想に沿って具体的にまちをどのように形作るか、を具体化する目的で策定されるのが、この「都市計画マスタープラン(2010年4月改定)」、俗にいう「都市マス」になります。こちらは都市計画法に基づくものですね。この都市計画マスタープランには具体的にまちの土地の用途に基づいた開発計画が描かれています。吉祥寺駅北口・南口周辺の約8.1haは「高度利用商業地域」、俗にいう繁華街に指定されているのですが、昭和40年代に形作られた吉祥寺の街の原型を、主に防災機能などを焦点として今後どのように再構築するか、がこれからの焦点となっています。

中でも課題の一つが⑤「謎のプロジェクト」こと「吉祥寺駅南口」の再開発です。

■武蔵野市都市計画マスタープラン
http://www.city.musashino.lg.jp/sesaku_keikaku/toshiseibibu/004736.html




吉祥寺南口駅前地区再開発計画

[三菱地所・ニュースリリース(2012/08/22)]

「吉祥寺南口駅前地区再開発準備組合」は、武蔵野市吉祥寺南町一丁目の再開発計画について、事業協力者として「(財)首都圏不燃建築公社、三菱地所レジデンス」を選定し、具体的な計画策定に着手しました。











資料出典:2012年8月22日付プレスリリース


ということで 


去る1年前の8月のリリースです。具体的には「吉祥寺南口駅前地区に商業施設、公共公益施設、共同住宅等の複合施設を建設するとともに、駅前交通広場の整備を行い、歩行者とバスで混雑する吉祥寺駅南口周辺を再整備し、新たな賑わいを創出する」という再開発計画です。 交通広場=バスロータリー整備の具体的な事業名は「都市計画道路3・3・14号線(南口駅前広場)事業」。都市計画道路3・3・14号線=通称吉祥寺駅南口線=南口の井の頭線ホーム下の道路の一部を1900㎡のバスロータリーと広場へと拡張整備する計画。そして隣接エリアも再開発されて施設が整備されます(余談ですがパークロード商店街は市道第2号線ですので都道とは異なります)。






























■写真:幅員の無いパークロード商店街を抜ける路線バス

実はこの計画、そもそも1962年に東京大学高山研究室が提示した吉祥寺駅周辺都市計画案(1962年)で駅南口も含めた再開発が議案に上ったのが発端。その後、計画は1987年(昭和62年)の吉祥寺駅周辺都市計画事業完了(北口駅前広場完成)をもって、主に北口側の再開発(むろん吉祥寺大通りが井の頭通りまで開通したことに伴う部分はありますが)に収斂していました。しかしそれから13年後の2000年、「吉祥寺駅南口駅前広場」が計画決定して、具体的に再始動が図られることになりました。























■写真:吉祥寺駅周辺都市計画事業で整備された吉祥寺大通り

しかし行政は地権者の皆さんの意向を尊重するスタンス。80余名に及ぶ地上権者の皆さんとの交渉や用地買収を進めている状態でしたが、これらは遅々として進みません。そして2014年に向けて吉祥寺駅や京王吉祥寺ビルが改築されるに至り、周辺の地権者の皆さんの中でも共同化(敷地を共同化し、高度利用することにより、公共施設用地を生み出す方法)による市街地再開発事業を進めようという機運が高まり、計画が三度本格始動した様です。


1962年    吉祥寺駅周辺都市計画案
           ※後に北口側再開発計画に範囲縮小
2000年11月 吉祥寺駅南口駅前広場 計画決定
2011年12月  開発構想たたき台提出
          (吉祥寺南口駅前まちづくり協議会より)※想定
2012年 3月 吉祥寺南口駅前地区再開発準備組合 発足
2012年 4月 吉祥寺南口駅前まちづくり協議会 解散 
2012年 8月 計画策定着手(事業協力者:
          (財)首都圏不燃建築公社、三菱地所レジデンス)
2013年 夏  共同化に向けた基礎調査委託
          (吉祥寺駅周辺/予算800万円)




 

ということで、現在は法定の市街地再開発事業の種になる「協議会」から「再開発準備組合」が任意団体として設立された段階。今後、計画が策定された段階で都市再開発法に基づく「市街地再開発組合」が立ち上がり、いよいよ再開発事業が本格的にスタートしていきます。

ちなみにこの事業協力者の「(財)首都圏不燃建築公社」さん、国交省を主務官庁とする財団法人で主に防災観点からの都市再開発等を手がけています。現在の理事長は倉林公夫さん、国土交通省局長から渡って現在のポストに至っている方ですね。南口再開発には武蔵野市開発公社がアドバイザリーとして関与しており、その所管は武蔵野市まちづくり推進課で国交省と所縁の深い部局です。この難易度の高い再開発、所管本省の重しも必要ということでしょう。






 

ちなみに、どのような再開発になるんでしょうか。





















写真: 調布駅南口東地区市街地再開発事業イメージ図(計画決定段階)


立体型のバスロータリー化検討など構想レベルの噂は絶えませんし、具体的な計画はこれからの様です。ただし参考に同規模の再開発事業を少しのぞいてみることにしましょう。近場で調布駅南口の再開発が手頃かもしれません。正式名は「調布駅南口東地区市街地再開発事業」。先ごろ地下化された京王電鉄調布駅南口広場に隣接したエリア約5000㎡の再開発事業です。吉祥寺南口は6500㎡ですからやや小ぶりかもしれません。再開発の核は地上16階/地下1階のビル、ここに住戸(190戸)商業施設公益施設が入ります。

これを南口再開発事業に置き換えてみると、テナント構成も少し想像できます。たとえば武蔵野市で慢性的に不足している子育て関連施設の入居も確実でしょうか。仮に児童福祉施設が入居すれば周囲200メートル以内での風俗営業ができなくなります。そして仮にバスロータリーの整備により歩車分離が進んでパークロードが歩行者優先道路化されれば、駅南口と井の頭恩賜公園を結ぶ新しい導線としてパークロード商店街の風景も大きく変わるかもしれません(吉祥寺グランドデザインの中では「市道第2号線の沿道の再整備」として簡単に触れられていますが)。

また地元のパークロード商店会や吉祥寺南口商店会さんの意向にもよるところが大きいのですが、たとえばペデストリアンデッキ整備により、JR中央線改札口のある2F面からダイレクトに再開発ビルや井の頭恩賜公園方面へと誘客を図る導線設計もありうるかもしれません。ただし駅南口の猥雑な空間こそが吉祥寺的、との見方もあることも事実。これらの計画、賛否両論というところでしょうか。

























■写真:武蔵野公民館(運営:(財)武蔵野文化事業団)

また公益施設といえば、気になるのが南口から徒歩2分の場所にある武蔵野市公民館の扱い。元日建設計の山下和正氏による名設計ながら竣工は1963年と50年を経過して老朽化。再開発事業の詳細は定かではありませんが、保留床を武蔵野市開発公社で引き受けて公民館を誘致し、武蔵野文化事業団にサブリースするスキームも考えられるかもしれません。

そして公民館跡地は低層の大規模集合住居(マンション)とか(あくまで想像です)。力のあるディベロッパーが「井の頭の杜」やら「井の頭恩賜公園隣接」と銘打てば即時完売は必至でしょうし、中心市街地の人口増でコンパクトシティを!という、これからを見据えたまちづくり命題にも沿った方向性です。再開発ビルには当然住戸も入るでしょうが、三菱地所レジデンスさんによる、これら再開発の「リング外」での事業協力戦術にも注目したいところです。


そして気になるのが竣工時期。

まず駅前広場(バスロータリー)は早ければ2014年に竣工計画でしたが、これは大幅に遅れる公算。そういえば油そばの「ぶぶか」の移転など、整備エリアに少しずつ更地が増えてきました。現在、検討が進められている都市計画の改定・決定に含めて進められることになるのでしょう。
























■写真:再開発地域(バスロータリー整備エリア)

そしてこの再開発事業、現在の計画では2016年~2017年頃「着工」となっている様です。無論当然のことながら、その前に関係者の合意がなされ、再開発計画が策定されている必要があります。仮に調布駅南口東地区市街地再開発事業の例に沿ってみると、再開発に伴う都市計画の変更決定が2010年で竣工が2015年7月ですから期間は約5年。仮に2015年に駅南口再開発に関する都市計画が変更・決定されたとすると5年後の2020年に竣工、約7年後とみることができます。駅前広場の方はそれよりやや早く整備される、ということになるでしょうか。

ただしこの再開発事業、昭和42年に計画決定された国分寺駅北口の再開発がようやく着工を迎えた様に、計画延期は毎度のこと。これからの工程として目安になりそうなのは、2014年に行政が策定する吉祥寺駅周辺の今後のまちづくりに向けたアクションプラン。この内容に注目したいところです。

ということで、話題豊富な吉祥寺駅南口エリア。次回はそれ以外の動きと共に、いよいよ本題の吉祥寺駅南口のまちづくり歴史に踏み込んでいきます。














<公開中:駅北口側の30年に及ぶ再開発史>

副々都心の商業地域へ!?。吉祥寺駅周辺開発の歴史を探る!特集(前半)、計8回特集です。

 1:全体共同ビル構想?
   http://www.kichijoji-city.com/2011/04/blog-post.html

 2:吉祥寺カーニバルと社会問題?
   http://www.kichijoji-city.com/2011/04/blog-post_2.html#more

 3:再開発委員会立ち上げ
   http://www.kichijoji-city.com/2011/04/3_4.html#more

 4:どう開発する?喧々諤々の議論
   http://www.kichijoji-city.com/2011/04/3.html#more

 5:動き始めた吉祥寺再開発
   http://www.kichijoji-city.com/2011/04/blog-post_8.html#more

 6:東京都VS武蔵野市VS地元
   http://www.kichijoji-city.com/2011/04/blog-post_9.html#more

 7:市議会全員協議会での大混乱と計画決定へ
   http://www.kichijoji-city.com/2011/04/blog-post_16.html#more

 8:再開発前半年表まとめ!
   http://www.kichijoji-city.com/2011/04/blog-post_20.html#more





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