第83回 幻の井の頭線計画?小田急電鉄と井の頭線の接続線の謎を追う!(2)



















陸軍工兵部隊

今回のBlog de 吉祥寺のの井の頭線の特集。小田急線との間にあったといわれる連絡線は本当に実在したのか。ということで前回は井の頭線と小田急線の誕生の歴史を追ったんですが、その頃はまだ連絡線は存在せず、その手がかりをつかむことはできなかったんですね。そして今回、再びそれを探し出すため、話はなぜだか旧日本陸軍の話題から入っていきます。そのキーワードは冒頭の「陸軍工兵部隊」なんですね。はたして工兵とはどんな兵隊さんなんでしょうか。


■写真出典:wikipedia「鉄道連隊

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%89%84%E9%81%93%E9%80%A3%E9%9A%8A




■工兵ってなんですか?

工兵。主に戦地での戦闘行為に直接かかわるのは歩兵・騎兵・砲兵でして、その中には入っていない訳なんですが、そのミッションはといいますと、砲兵が構えるための陣地つくったり、歩兵や騎兵が川を渡るための橋をつくったり道路をつくったりすることなんですね。































1895年に終結した日清戦争(英語:First Sino-Japanese War)やその後の日露戦争を経て大陸での戦闘が多くなった陸軍なのですが、まだまだ未開地も多く、インフラが不足しているところで活躍したのが橋・道路を敷設する工兵隊だったんです。ただし陸軍内での地位は低く、創設当時のトップは大隊長である中佐にすぎませんでした。会社の次長さんみたいな感じでしょうか。

そして、その後は技術革新を経て鉄道を敷設することも増えて部隊もどんどん増強されていきます。有名なのが中国の東北部を縦断する南満州鉄道の建設ですね。そしてその後、工兵隊の中でも、物流の要たる鉄道敷設の役割を担う「鉄道連隊」ができたんです。トップは少し偉くなって大佐です。時は日清戦争後、1896年のことなんだとか。


■写真出典:満州鉄道路線図:個人ブログ

http://www.geocities.jp/keropero2000/china/mantetsu.html



■鐵道連隊の活躍


この鉄道連隊、陸軍の大陸での転戦を支えた訳なんですが、実は戦争の支援だけをしていた訳ではないんですね。実は大活躍したのが関東大震災のとき。1923年の大震災で東京の鉄道交通は空前の被害を受けたのですが、その線路などの復旧に大活躍したのが、この鉄道連隊なんだとか。今でも災害時に自衛隊が被災地に出向いてインフラ復旧に活躍していますが、その走りという感じでしょうか。

そして時は第二次世界大戦。関東大震災から20余年を経て東京の交通も新しく復興しましたが、そこでまた壊滅的な被害を受けることになったんですね。いわゆる1944~1945年の東京大空襲です。皆さんご存知の通り、最初の空襲、1944年の米サンアントニオ1号作戦の戦略爆撃目標は、この吉祥寺のある「東京都武蔵野市」だったんです。そしてその後幾度かの爆撃で東京市街の約50%は焼失するという被害に。





















 

■写真出典:wikipedia東京大空襲
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E5%A4%A7%E7%A9%BA%E8%A5%B2


■井の頭線の爆撃


そして当時の“東急”井の頭線、何とか戦火を逃れて営業していましたが、1945年5月25日の空前の空襲永福町の車両基地を直撃して大被害を受けるんですね。現在は富士見ヶ丘駅にたくさんの車両が留まってますが、当時は永福町駅のみ。当時の29両あった車両のうち23両が焼失他の車両もほぼ半壊という、まさに路線存亡の危機に。


難を逃れた車両はわずか2両は、神泉駅のトンネルに退避し、現場の社員総出で延焼を食い止められたんだとか。



たった2両の車両が残された井の頭線。現在からすると想像もつかない感じですね。当時は「周辺の雑木林より客の数が少ない」と言われた井の頭線ですが、さすがにこれでは営業することはできません。他の路線は被災地以外から車両を運んできて復旧が進められたのですが、困ったのは井の頭線。ご存知の通りどの鉄道とも線路がつながっていなかったんです。線路がつながっていなければ車両を融通してもらうことができません。
 


そこで急遽持ち上がったのが「他の路線と線路をつなげて車両を持ってこよう」という発想。都市化の進む現在では考えられない話ですが、幸か不幸か都市部の50%を焼失していた当時の東京、一気に計画がすすめられることになったんですね。では資材と工事要員はどう確保するか
頭をかかえている矢先に、颯爽と現れたのが大陸で南満州鉄道などの敷設を終えてその主力部隊が帰国していた鉄道連隊だったんですね。

次回は鉄道連隊と井の頭線の奇跡の復活に向けた大計画に迫ります。



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