第130回 吉祥寺の街なかに、なぜ「空き店舗」が!?その背景に迫る(2)




オンワードが約700店舗閉店


今回のBlog de 吉祥寺の特集では「吉祥寺の空き店舗」をクローズアップしています。が、その前に、まずはこのニュースから。冒頭のオンワードとは、女性向けの『23区』『組曲』、男性向けの『J.PRESS』『五大陸』等のブランドで有名なファッション・アパレル企業です。ニュースの内容は、このオンワードが、2021年にかけて700店舗を閉鎖する、というもの。

吉祥寺との関わりでいえば、「組曲」の丸井吉祥寺退店が記憶に新しいところ。今後、東急百貨店内の「23区」吉祥寺パルコの「ポール・スミス」が閉店の対象になるのでしょうか。そしてさらに注目したいのは、オンワードが今後、店舗ではなく、自社通販サイト「ONWARD CROSSET」を拡充していく方針である、という点です。

今回はこのニュースから「吉祥寺の空き店舗」を掘り下げて考えてみたいと思います。

写真出典:東急百貨店4Fフロアマップ




なぜ、空き店舗が生じるのか


その背景を一言で言ってしまえば「お店の損益分岐点を超える売上が上がる見込みが立たない」、つまり「儲からない」から。「儲からない」ので退店した結果、そこが空き店舗になる、というのは当たり前。それではなぜ、儲からないのでしょうか。あえてシンプルに言えば「売上が立たないから」「コストがかかりすぎるから」です。オンワードの一件も、同じように言い切ってしまえば「出店していても儲からないから、退店する 」ということです。

では、ここからは「吉祥寺の空き店舗」の背景を、この売上とコストの2つの要因に分解して考えていくことにします。



売上が立たない!


商業統計上、吉祥寺に多くみられるお店の種類は「ファッション・雑貨」であることは前回の通り。冒頭のオンワードの業種も、ファッション・アパレルです。それではなぜ、オンワードのような有名ブランドを持つ企業の売上が立たなくなったのでしょうか。より正確にいえば「なぜ、店舗で、売上が上がらなくなった」のでしょうか。

その理由として、大きく3つの要因を考えてみます。

その3つとは「通販サイト(EC)の台頭」「競争の激化」「商圏環境の変化」、つまりマーケティングミックスで言えば、チャネル・プロダクト/プライス・プレイスの変化です。















通販サイト(EC)の台頭

1点目の「通販サイト(EC)の台頭」は、冒頭のオンワードの事例がそのままあてはまります。通販サイトの台頭で、その影響を最も受けているのがファッション・雑貨市場です。皆さんも、よくZOZOTOWNやメルカリで洋服や雑貨を購入していませんか。そして、このファッション・雑貨こそ、吉祥寺で最も多い種類のお店であったことを思い出してください。通販サイトの台頭でリアル(店舗主体)のファッション・アパレルは軒並み苦戦を強いられており、それが退店の一因になっています。これら吉祥寺に限った話ではありません。

ちなみに、吉祥寺のファッション・雑貨店、ここでは路面店を思い出してみてください。その代表的な店舗としては、

ザラ 吉祥寺店
トゥモローランド 吉祥寺店
ビューティアンドユース 吉祥寺店
ユニクロ 吉祥寺店
ラグ バイ フランフラン 吉祥寺店
アーペーセー 吉祥寺店
OSHMAN'S 吉祥寺店
ギャップ 吉祥寺店
シップス 吉祥寺店
ナイキストア 吉祥寺
ラコステ 吉祥寺店

などがあります。実は、これらの店舗(ブランド)は、いずれも通販サイト(店舗)を運営しています。また、それほど規模が大きくないものの吉祥寺で有名なセレクトショップ、たとえば「ROL(ロル)」「SEEK&FIND」「STEPS」、北欧セレクトショップ「CINQ」、ユニークなTシャツの品揃えの「graniph 」なども、それぞれ通販を展開しています。そうなると、たとえば店舗で品揃えを見てフィッティングした後、帰宅して通販サイトで買う、という人もいるでしょう。

このような「通販サイト(EC)の台頭」が、店舗における売上減少につながっている、つまり、通販に十分投資できておらず売上が確保できていない企業は、店舗を維持するだけの十分な儲けが得られず退店を余儀なくされている、結果として、吉祥寺の空き店舗につながっている、という背景はありそうです。

ということで


今回は「通販サイト(EC)の台頭」の吉祥寺の街への影響を見てきました。しかし、一方で、この波が別の形で吉祥寺の街に押し寄せています。

そのあたりを次回、詳しく見てみましょう。

写真出典:ZOZOTOWN ARIGATOセール(2019年)

人気の投稿