第72回 吉祥寺のガンジス?街を育んだ母なる流れの謎に迫る!!(9)



















猛暑


昨年2011年は東日本震災の影響で社会的に節電が迫られていた夏でした。皆さんがそれぞれにアイディアを絞ってエアコンに頼らない夏の猛暑対策を考えてましたねー。吉祥寺のしゃべり場「きちカフェ」でもいろんな避暑アイディアが出ました。


その中で面白かったのが「汗をかこう」というもの。しっかり汗をかいてカラダ本来の基礎代謝を取り戻せば多少暑くても大丈夫!(だからエアコンの設定温度を多少高くしても凌げるよ!)という話でした。


■「きちカフェ(2011年5月27日)」

5月27日 吉祥寺のしゃべり場「きちカフェ!」開催しました(次回は6月27日!)http://www.kichijoji-city.com/2011/05/527627.html

ちょうど井の頭公園から万助橋経由で玉川上水のほとりを歩いていくと、まさに天然の日除けの木々と、天然の打ち水たる上水のお蔭で、体感温度が3~4度は下がる感じです。何より水が流れていることがホッとする様な、何か癒しを感じさせてくれますね








■少しずつよみがえる玉川上水


現在、玉川上水全区間約43㎞のうち暗渠化されているのが約13㎞、ほぼ1/3が地下になってしまいました。小平監視所より東は空堀となり水も失われていた上水に清流を復活させよう!という動きが出てきたのが1980年代のこと。玉川上水を所管する東京都水道局の「清流復活事業」によって1986年ついに小平監視所以東の玉川上水にも水流がよみがえります。


















当時の東京都が設置した事業検討委員会の先生方を見ると主に都市景観の観点から検討がなされていた様子がうかがえますね。やはり水流があり木陰があると、人はホッしますし、癒しを得られます。高度経済成長時代に地下化され、水道施設としての役割を終えた玉川上水ですが、人々に自然と癒しを与える、という新たなミッションを与えられて復活したって訳です。



■3種類のミックス


ところで現在、玉川上水を流れている水は、羽村堰(東京都羽村市)の取水口から取られた水そのままではありません

玉川上水の水は小平監視所を経て多摩湖狭山湖に送水されています。では今、井の頭公園の脇にある玉川上水を流れる水はどこから流れてくるのでしょうか。境浄水場(東京都武蔵野市)?という方もいそうですが、確かに境浄水場は玉川上水の脇にありますが、玉川上水の水とは直接関係がありません。

実は昭島市にある多摩川上流水再生センター(昭島市宮沢町)から小平監視所の先に送水された「高度処理水」なんですね。羽村堰から流れてくる水の様に一見見えるのですが、小平監視所を境にまったく別の水が流れているって訳です。なんだか不思議ですね。
























出典:多摩川上流水再生センター

http://www.gesui.metro.tokyo.jp/odekake/syorijyo/04_03.htm

ところでこの高度処理水、下水を処理した水ということで「なんだか少し汚いのでは」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、ところがどっこい。東京都の「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」の水質基準を十分に満たし、魚も余裕で住める水質。そんじょそこらの河川よりキレイです。水量は13200㎥/日。25メートルプールの水量が約500㎥ですから、その約20~30杯分の水量ですね。




















写真:小平監視所の高度処理水の湧水口


これらの水は400年前同様に吉祥寺の脇を通り、武蔵野台地を潤しながら、高井戸の手前、富士見ヶ丘駅の南で暗渠に入り、地下のパイプを伝って、井の頭線高井戸駅付近で神田川(旧神田上水)に放水され、同河川の渇水対策に役立てられています(今度、放水現場をチェックしてまいります)。


おりしも東京都もこの「高度処理水」の使い道に困っていた訳で、まさに渡りに船という感じだったんでしょう。





■で、今も玉川上水の水路は四谷まで通じてるの?


そこで思うのは「たしか玉川上水は四谷大木戸(現在の四谷三丁目交差点付近)まで流れていたはず」ということ。高井戸より先の玉川上水は現在どうなってるんでしょうか。




















結論からすれば現在も四谷まで水路は保全されている様です(玉川上水通水試験結果/昭和61年/東京都水道局)。いざというときの原水導水路の代替機能として、ということみたいですね。ただしその大半は暗渠になっています。



ただ勘の良い方は「たしか笹塚駅の脇を流れている小川って玉川上水じゃないの?」と気づかれるかもしれません。笹塚界隈は都内唯一の開渠(トンネルでない)部が3箇所残されています。


















ではそこを流れている水は?と言いますと、この水、この界隈の地層から湧き出している地下水なんですね。よくみると鯉や亀も住んでおり水質は抜群にキレイです。高度処理水は高井戸付近ですべて回収されていますので、その水とはまた違うんです。


つまり現代の玉川上水は


 ①羽村堰  ~小平監視所 : 原水(多摩川の水)
 ②小平監視所~高井戸   : 高度処理水
 ③高井戸  ~         : 湧水


という3種の水が区間毎に流れ分かれているという、何とも複雑な水路になっているんですね。





ちなみにこの笹塚界隈の玉川上水は大きく蛇行しているんですが、この一帯は「牛窪低地」と呼ばれる窪地。これを迂回する様に水路が掘られてるあたりに上水開削時の測量技術の高さを感じることができます。


















■出典:GoogleMap







また面白い写真があります。この写真は下高井戸周辺の玉川上水(暗渠)脇の写真ですが、左が高く、右が低くなっていますね。上水が流れているのは左の高い崖上だったんですね。自然流下を意図してしっかり水路が測量されながら開削されている様子がわかります。



















写真:下高井戸界隈の玉川上水跡(左側の崖上。右手の崖下は住宅街


■今でも生きる玉川上水の名残!


桜上水代田橋(かつて玉川上水が開渠であった頃にかかっていた橋)といった上水ゆかりの地名が駅名となっている様に、京王電鉄はかつて玉川上水に沿って線路が建設された鉄道でした。


代田橋付近では、すでに暗渠(トンネル)となった玉川上水の水路部分が公園緑地化されているのですが、なぜか開渠当時のまま橋が残されており、水路がない道路に突然「橋らしきものがかかっている」という往時を忍ばせる面白い光景があります。そういえば明治大学正門の脇にも玉川上水の橋がありますね。


















写真:明治大学正門脇の玉川上水にかかる橋


そして、そのまま地下水路は京王電鉄の地下トンネル脇新宿の葵通りの地下を抜け、JR新宿駅構内地下を横切り新宿御苑の北端に沿って四谷三丁目まで流れていきます。


現在、新宿区と渋谷区の区境がJR新宿駅南口のサザンテラス界隈を東西にひかれていますが、これは往時の玉川上水に沿ってひかれたものなんですいね。また御苑界隈では2010年、新宿区による「玉川上水・内藤新宿分水散歩道」事業が完成、して往時の上水を偲ぶことができるようになりました。























開削から約400年、淀橋浄水場というパートナーを失い一時は命運のつきかけた玉川上水。しかし時代の要請に応じて、コンセプトを新たに復活しつつあるって訳なんですね。